夫を変えることは不可能

ジュリーは変わることを拒む男と結婚しているのです。自分を愛するように夫を仕向ける努力をい
くらしても効を奏しません。夫は彼女の努力を廟るだけです。その結果、彼女は努力したことを後悔
し、自分を責めるのです。彼女は頭もよく、やさしい女性です。しかし、彼女のやさしさや愛情に対
して、夫はつらく当たるので、自分が馬鹿に見えてくるというわけです。
「夫が変わらない場合はどうしたらいいんですか?」と、ジュリーと同じように問われる女性はきっ
と多いことでしょう。と言っても、ジュリーとアンディのケースほど深刻ではないかもしれません。
そうであれば幸いです。だからといって、この本があなたにとって役に立たないというわけではあり
ません。あなたの夫が基本的にはやさしい人であっても、ある部分では頑固で、変わることを絶対に
しないといった人であるならば、きっとこの本から何かを得られるにちがいないと思います。すぐに
役立つ何かを。
まず、結婚の相手が、変わることを拒む男であれば、その夫がやっていることはだいたい次のよう
なことだと思います。

自分の欲求不満を妻にぶつけている。
妻の気になることに対して無関心である。

女性は〈男らしい〉タイプを好むと信じている。
妻のニーズに応える心の構えを持っていない。
自分の過ちを認めることを拒む。
妻の存在や、妻の愛情を当然のことと考えている。
自分の気持ちを多く語らない。
ここで断っておきますが、私は、〈完全な夫〉や〈完全な結婚〉を求めることを主張しているので
はありません。私が言いたいのは、気ままでない夫、妻の気苦労に関心を示してくれる夫、自分の弱
点を隠ざない夫、自分の我を通すことや経済的な理由を盾に妻への愛情の表現を怠らないような夫、
そして、妻が必要としているときに応えてくれる夫、そんな夫を求めるのは少しも間違っていないと
いうことです。別な言い方をしますと、行動によって妻への愛情を示せるような夫であることを望む
のは当然だということです。
変わることを拒む夫から身を引かない理由を尋ねますと、ほとんどの女性は、離婚することを考え
ることはあるが、いろいろな理由から離婚を思い留まっていると言います。かっての〈良き日〉の思
い出を捨てられないというのが、その理由であるかもしれません。経済的な理由から離婚できないの
かもしれません。離婚した後の生活が必ずしもよくなるとは思えないからかもしれません。と同時に、
こんな理由による場合もあるでしょう。夫はほんとは私を愛したいのだから、愛せるように夫を変え
なきゃならないし、そうすることが私の務めなの、といった信念にとらわれているために。実は、こ
のように話す女性に私は多く出会いました。

しかし、夫を変えるなどということはおよそ不可能なことなのです。これまでに多くの妻たちがや
ってみましたが駄目でした。一般的にいって、通常の状況においては、一人の人間が、どんなにパワ
フルな人であっても、他の人間の基本的な人生態度を変えさせるなどということはできないのです。
もちろん、例外はあります。たとえば、戦争による捕虜や、信仰集団の虜となった人たちが洗脳によ
って世界観や、人生観が変わるという例外はあります。しかし、そのような場合でも、生活をコント
ロールする環境が変わると、人間の自主的な判断力が回復するということが、そのような捕虜や信者
たちが解放された後の調査研究によって明らかにされています。
つまり、夫に言わせたいことを強制して言わせ得たとしても、夫の心はやがて変わってしまうとい
う事実に気がつくことが必要なのです。妻が求める通りには夫は変わらないばかりか、変わることを
強制されることに対して報復するにちがいないのです。
一つの比喩で説明しましょう。たとえば、夫との関係は、ちょうどトランプでゲームをやっている
ようなものでしょう。あなたとあなたの夫の手にあるカードは、配られて与えられたものですから、
その手は変えられないわけです。そして、その手にしているカードを使ってどのようにプレイするか
を決めることしかできないのです。これと同じように、夫がもっている遺伝によって与えられたもの
や、生育歴による影響を変えることは、あなたにはできないわけです。
夫を変えようとすることは、ちょうど、テーブルの向こうの夫の手の中にあるカードに、あなたが
手を伸ばし、どのカードを選ぶかを夫に強いるのと同じなのです。もしだれかがそんなことをあなた
に対してしたとしたら、あなたはきっと、その人の手を払いのけるにちがいありません。あなたの夫
も、きっと同じことをすると考えられませんか?。
自分の思う通りに事が運ばない状態になり、いらいらしてくると、多くの女性は、相手の夫が手に
しているカードをコントロールしようとしてしまうのです。ジュリーはまさにそのようなことをしよ
うとしたわけです。ジュリーは自分がものすごく惨めに感じた時に、自分に対して夫がつらく当たる
のは自分が悪いからだと思ったのです。気分が滅入り、パニック状態にあったジュリーは、夫が手に
しているカードを自分で操るほかないと信じこんでしまったというわけです。
では、夫が変わらない場合に、どうしたらいいのでしょう。まず、夫が自分で自分を変えるために
必要なカードを選ぶ(または選べる)ように、あなたが手にしているカードで、頭を使って最善の方
法でプレイすることです。つまり、夫が変わることができるための踏み台になるように行動すればよ
いのです。夫の変化を刺激はしても、あなたが夫の変化をもたらすことはできないのです。
では、どのようにするのか、もう少し、具体的に話しましょう。まず、言語的、非言語的手段によ
って、あなたに対する夫のプレイの仕方に対決すればよいのです。あなたが欲しくないカードは無視
するか、捨てるかすればよいのです。あるいは、夫がどんなプレイの仕方をしているかを告げたらど
うでしょうか。時には、こんなやり方ではプレイできないと主張することです。そして、あなたが、
どんなプレイの仕方をする場合でも、夫に対して、愛情と支援的態度をもって接することが大切です。
そうすれば、たとえ、夫がつらく当たるという仕返しをしたとしても、自分の行為に対してうしろめ
たさを感じなくてすむわけです。また、夫の相手になるのを止めたとしても、そのことに罪責感を抱
かなくてすむのではないでしょうか。